「風を結んで」の捨吉さん。
すごーく渋くてかっこいいだけならず、すべてを締めて持っていった感じかしら。
この物語は、一見片山平吾と橘右近の二人の生き方を対比させて、「生きる」コトを描いている作品のように思えます。
時代が変わっていく中で、過去の生き方に縛られ、プライドを捨てきれず、結局は死を選ぶ右近。
それに対し平悟は、プライドに囚われずモノの本質を捉える事が出来る自由な心を持ち、常に前に進んで行こうとしている。
どっちがどっちではなく、右近の生き方にも共感を持ち、一方の平吾のどんどん変わっていく事が出来る姿に拍手を送りました。
でも実は捨吉の物語だったのではないかと思うのです。
ストーリーテラーとして随所で捨吉の語りが流れて行きます。
ですが、ラストでは捨吉の想いに集約されていくように思います。
初演と今回の舞台とでは、ただ単に役者が変わっただけでなく演出その他がいろいろと変わっているそうですね。
物語の冒頭の歌「夢物語」は、初演では捨吉さんが歌っていたというし…
ラストの「白虎隊」は今回は、白虎隊に扮している9人が歌っていますが、初演では捨吉さんが吟じられたってホントですか?
しかも、どこかでえげれす語もしゃべっていたってホントですか?
前回の捨吉さんは鈴木綜馬さんなので、歌はさぞかし素晴らしかったのではないか…と思われます。
うーん、綜馬さんの歌で聞いてみたいなー。
でも、今回、歌い手でない山崎銀之丞さんを起用されたのはそれなりに意味がある事なのでしょうね。
右近も前回の今拓哉さんは歌い手さんだけど、今回の大澄さんはダンサーだし…
その役者さんを起用した”作り”になっているのが、見てもいないのになんとなく想像できますね。
で、捨吉さん、銀之丞さん…すご過ぎます。
私なんぞは、役者さんの事を何も知らないので、銀之丞さんはお初でした。その渋さ、芝居の上手さに完全にやられちまいました。何度泣かされたことか。。。
ストリーテラーとして語った後に去っていくトコの身のこなしとか、「ショービジネス」でのコミカルなダンスとか、お楽しみな所は満載でしたが…
やはり、ラストのトコですよね。
新橋ステーションで平吾が「何故みんなそんなに死にたがる〜」と嘆いている傍で…それに呼応するかのように、
「みんな行っちまいなさるんですね。死んじまったら元も子もねえや。」と語る捨吉。
その顔は、静かな怒りに満ちていました。
死にたがる者達への怒り…。
それは、この後語られる若くして死んでいった若者たちの無念を強く感じているからこその言葉。
「死ぬことだけが晴れ舞台」「打ち上げだろうが仕掛けだろうが、花火の燃えカスは燃えカスに過ぎない」…と侍を憐み、侍を捨てた捨吉。
このシーンもすごい。内に秘めた怒りが見えるかのよう…。
で、”何故任務のための金を自分の為に使ったのか”…と言う平吾の問いに対し「昔話をさせて頂きます」と会津の若者たちの話を始める捨吉。(渋い、カッコいい)
「身には創痍を包み」「剣を杖ついて」飯盛山に登っていく白虎隊の生き残りたち…
彼らが「黒煙上がる」鶴ヶ城を臨み、「以てやむべし」と「腹を屠って死す」姿を映しながら…(また、歌が泣かせるのですけど…)
捨吉は地に座り、深々と頭を垂れる。
その時の捨吉の表情を見ると…目頭が熱くなるのを感じます。
ああ、思い出すだけで涙が…
で、この後に続く捨吉の「あの子たち…」と言う語りかけがまた涙を誘います。
さぞかしあの子たちを憐み、それを防げなかった自分たちの力のなさを悔やんだことでしょう。(白虎隊に適切な指導者がついていれば、全員自刃で果てるなんてことにはならなかったでしょう)
私は白虎隊の事はごく簡単な知識しかないし、彼らを美談にする扱いは好きでないのですが…
会津若松に行った時に、地元の人々がお城を愛し、白虎隊や会津志士達を愛し、大切にしている事はよくわかり、好感が持てました。
ちょっと話は逸れました。
生きていれば平吾達と同じ年頃の子供たち…
平吾のために200円を使う事は、あの子たちへの供養と思えたと語ります。
「生きて生きて生き抜こう」と言う平悟の言葉…
その言葉の通りに自分も生きていき、一座の行く末を見たいと思ったと語ります。
実は自分がでなく…ただ一人の生き残りの栗山大輔を生きさせ、大輔に(あの子たちがこの世で見ることができなかった)夢を見させたかったのかもしれません。
でも、大輔の方では一人だけ生き残ってしまった負い目をしょったまま、一人だけ楽しむ事は出来ないと自らに枷を掛けて死んでいきましたが…
「死ぬだけの戦いが納得が行かなくなった。」と語る捨吉。
復讐のために…と、ただそれだけの為に生き残り再び戦いを起こそうと考えていた会津志士達。しかし、再び戦争が起これば、悲惨な死を遂げる者達が増えるだけ…それをあの子たちが喜ぶのだろうか…と。
結果として平吾の言葉が捨吉を戦いに向かわせなかった。
それが思案橋の決起を不成功に導き…東京が戦いのるつぼと化すのを防げた…と考えるのは行き過ぎでしょうか?
で、捨吉の「風を結んで」
その歌声が何とも胸に響き、その歌を皆が歌ったあの時を思い出させ…涙が止まらなくなった事もありました。
…歌って上手い下手だけじゃないですね。
綜馬さんの歌も聞いてみたいのは確かだけど、銀之丞さんで良かった…と思わせてくれます。
ってくらい、銀之丞捨吉にいっぱい泣かせてもらったのでした。
やっぱり一番好きなのは「またネ!」です。
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